ここからが伝説の始まり「シオリエクスペリエンス」が今、激アツだ

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あなたは音にぶっ飛ばされたことはありますか。
泣けるメロディ、感動する歌詞。
「いい音楽」というものはいろんな語り口があると思います。
そうではなく。
理屈ではなく、もはや理不尽に。
ただただ、音そのものに圧倒される。
繰り出される音の洪水とパフォーマンスにただ圧倒され、屈服するしかない。
文字通り「音にぶっ飛ばされる」という感覚。
そんな体験をしたことがある人にこそ、ぜひ触れてほしい。
読む者を「音でぶっ飛ばす」マンガ。
SHIORI EXPERIENCEが、今とてつもなくアツい。
SHIORI EXPERIENCE ~ジミなわたしとヘンなおじさん~ 1-8巻セット
長田悠幸×町田一八
スクウェア・エニックス
売り上げランキング: 55,379

強烈な、あまりにも強烈な一冊

SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさんは月刊ビッグガンガンで連載中。
たびたび書店でもプッシュされているのを見かけるので、未読でもタイトルは聞いたことがあるという人も多いかもしれません。
とりあえずいつものあらすじを。

“ジミ”なアラサー高校教師・本田紫織は、 アフロヘアの“ヘン”なサイケおじさんに取り憑かれちゃって生活一変。
私の人生、この先どうなるの!?

公式で第一話を無料で読めます。
未読の方はどうぞ。
http://www.jp.square-enix.com/magazine/biggangan/introduction/shioriexperience/
連載開始は2013年なので正直今更感があるんですけど、先日発売されたばかりの10巻があまりにも強烈だったんですよ。
SHIORI EXPERIENCE ジミなわたしとヘンなおじさん(10) (ビッグガンガンコミックス)
長田悠幸 町田一八
スクウェア・エニックス (2018-04-25)
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このマンガがここまで積み上げてきたものが、この10巻をもって一気に爆発してしまった。
元々面白さは巻を追うごとに高まってたんですけどね。
ここにきてものすごい勢いでぶち抜かれてしまった。
それほどの強烈な一冊。
10巻で描かれたのは、主人公の本田紫織が率いるバンド『シオリエクスペリエンス』がすべてのピースを揃えて始まった瞬間。
そして物語当初からの最大のライバルであった吹奏楽部顧問、青島すばる先生との一つの決着の瞬間でした。
※以降は10巻を読んでの想いをひたすら垂れ流すネタバレの嵐になりますので、未読の方はさっきのリンクから、ね?(CV:諏訪彩花(たぶん伝わんねえなこれ

最強のライバル、すばる先生

10巻は、とにかくすばる先生というキャラクターの集大成でした。
吹奏楽部として全国コンクール金賞という最大の名誉を獲得しつつ、そのルックスや(一見)柔和な雰囲気で生徒や先生にも愛される。
一方で部員には関西弁バリバリの厳しい指導をしつつ、ぽっと出の軽音部をクソカスと罵り続ける一面もある。
あまりの罵倒ぶりに鼻持ちならないキャラにも見えるんですけど、彼女にはきちんとその資格があるんですよね。
全国金賞という名誉を勝ち取るために、どれだけの覚悟があったか。
大した実績も覚悟もない軽音部程度が、我々と同じ土俵に立つなんて滅相もない。
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8巻から9巻で補完されたすばる先生と光岡のストーリーでは、その覚悟の正体が描かれます。
いかに二人が吹奏楽で頂点を目指すためのパートナーに至ったか。
その絆の深さ。
ただし、そこにはほんのりとした歪みをにおわせつつ。
そしてその歪みは、本田紫織が、シオリエクスペリエンスが「あの曲」を生み出したことで顕在化します。
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『局所性ジストニア』
管楽器奏者がそのキャリアを絶たれる恐ろしい病。
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すばる先生は、そんな状態の光岡を引き抜こうとする紫織に対する苛立ちを、全く隠そうとしない。
なぜお前ら風情が自分たちを引き離すのか。
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だって自分がいれば、光岡は大丈夫なんだ。
これまでどおりやっていけば、必ず、大丈夫。
まるで自分に言い聞かせるように、繰り返します。
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そう、すばる先生はプライドが高いんですよ。
自分が注目されることを何より喜ぶ人間です。
そのために本来のキャラとは違うぶりっ子だって演じます。
だけどそれ以上に、覚悟をもった人に対して払うべき敬意については誰よりも理解している。
だからこそ本番当日。
直前まで紫織たちを煽る態度をとりながらも。
ギリギリまで悩みに悩みぬいて、シオリエクスペリエンスの演奏に正面からぶつかります。
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そして光岡に対して、かつてクソカスと侮った連中の演奏から「目ぇそむけんな」と言い放つのです。
目の前に迫っているものは、逃げていいものじゃない、向き合えと。
ひらすた馬鹿にして、見下し続けてきた存在。
かつて覚悟がないと罵った相手の、その本気を受け止めろと。
繰り返しになりますけど、すばる先生が実力あるものに対して礼儀を払う姿勢。
これにものすごく好感度が上がってしまって。
もともと、本田紫織の生み出した曲に対する「畏怖」のようなものは感じていたはず。
だからこそ、一度挫折し、なによりすばる先生自身が見限った井鈴に対して本気の指導を施したりもしたわけです。
あの山よりも高いプライドを押さえ、シオリエクスペリエンスの演奏に正々堂々正面から対峙する、その覚悟。
そこになによりしびれてしまった。
結果として、いざ対峙したその演奏には、どんな言葉よりも雄弁な力があった。
生まれてしまった歪みを、まさに「ぶっ飛ばしてしまった」
かつて、金賞を取った時には、光岡を笑顔にさせられなかった。
プレーヤーだったころの自分が見られなかった景色。
光岡には、この才能には、かつての自分とは違う景色を見せてやりたい。
そのためには、もっと、もっとのぼりつめなければ。
そう信じてここまでやってきた。
でもあのバンドなら、「あの曲」なら、光岡はその場所にたどり着いてしまう。
自らの体験という何よりの説得力でもって理解させられてしまう。
これまで自分を支えてきたものが、なにもかもがぶっ飛ばされてしまう、それくらいの衝撃。
この瞬間の見開きは、間違いなくこの巻のハイライトであり、これまでのシオリエクスペリエンスすべてを通じてのハイライトといっても過言ではありません。
そしてすばる先生は、顧問として光岡に命令する。
「あそこに乱入して、ステージメチャクチャにしたれ」と。
いつもの調子で、だけど優しく。
憎くて憎くてしょうがないはずの、本田紫織の元へ送り出す。
そして結果として、光岡が加わりさらに進化した「あの曲」は、すばる先生自身のプレイヤー時代の呪縛すらも「ぶっとばす」
それはさながら、かつて光岡が「今度は私が魔法をかける」とすばる先生の前でソロを吹いたときの、そのリベンジのごとく。
その描写は最高潮を迎えたと思っていた読者を、さらなる高みに連れていく、あまりにも劇的な演出でした。
もうね、ページをめくりながら涙が止まんなかったんだよ…

最後にすばる先生が光岡に手向けたトランペットでの「ラヴ・イズ・オーヴァー」
歌詞の内容もさるところながら、そもそもこれはすばる先生が若き頃に吹奏楽の世界に入るきっかけの曲です。
それだけでも十分エモいんですけど、誰の演奏とも知らぬ「ラヴ・イズ・オーヴァー」に対して紫織が一礼を捧げるシーンが、またいいんだ。
そもそも「あの曲」が生まれた背景には、すばる先生の存在が不可欠で。
「自分たちには覚悟がない」と、それを教えてくれたのは他でもないすばる先生であり。
そのアンサーとして、もがき苦しんで生まれた曲なわけですよ。
だからこその、敬意の一礼。
ひたすらに、アツい。
音楽マンガを読んでたと思ったら、バトルマンガも真っ青の激アツ展開を見せつけられてしまった。
圧巻。

ここからが伝説の始まり

10巻(連載でいえば実に4年)の長きにわたって立ちはだかってきた、すばる先生。
その魅力がとにかく際立った巻でした。
ちょっと腹立つぶりっ子先生にとどまらず、ここまでの味を出してくるとは本当に恐れ入った。
最高のライバルキャラですよ。
ただただ、拍手を送りたい。
しかし、それにしてもこの作品の行く末が、心底恐ろしい。
冒頭で述べた通り、10巻はすばる先生との決着の巻であり、シオリエクスペリエンスが始まりを迎える巻。
そう、バンド・シオリエクスペリエンスは、これからようやく始まる。
最大の障壁に思えた吹奏楽部との決着は始まりに過ぎない。
「第一部・完!」みたいなもんですよ。
なにしろ本田紫織は、このバンドでもって伝説を残さなくてはならないわけで。
全国コンクール金賞の吹奏楽部程度、軽々しく超えていかなくてはいけないのです。
これだけの盛り上がりを見せた、さらにその先がどのように描かれるのか。
期待が留まるところを知らない。
はたして紫織は、シオリエクスペリエンスはどんな伝説を残すのか。
最後まで見届けようじゃありませんか。

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