今更ながら「ヨコハマ買い出し紀行」が深々と刺さってしまった

今回は友達に薦められたヨコハマ買い出し紀行というマンガの感想を書きます。
ヨコハマ買い出し紀行(1) (アフタヌーンコミックス)
講談社 (2012-11-19)
売り上げランキング: 3,599
正月休みにまとめて読んだんですが、年明けに会うマンガ好きの方々が口をそろえて「いいよねー」と絶賛するものだから、薦められるまでタイトルすら知らなかったのを恥じるばかり。
しかしながら後述するとおり、実に緩やかに丁寧に時の流れを描いた作品で、正月のまったりした間に読めてよかったなーと思う次第。
んでは、早速感想行きたいと思います。

変わるもの、変わらないもの

今作は芦奈野ひとし先生のデビュー作。
連載に先駆けて描かれた読み切り版はアフタヌーン四季賞を受賞。
参考:Wikipedia -アフタヌーン四季賞-
ここで少しだけあらすじを。
この作品の舞台は今よりも少しだけ未来。
地球温暖化による海面上昇の結果、経済的にも文化的にも衰退してしまった日本です。
人口も少しずつ減りつつある世界で、見た目もほとんど人間で感情も持ち合わせたロボットが、人間たちと共に暮らしています。
主人公はそんなロボットの一人である初瀬野アルファさん。
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月琴を爪弾くアルファさん
三浦半島のとある喫茶店の店員として、ある日突然行方が分からなくなったオーナーの帰りを待ち続けています。
彼女を中心として、滅びゆく時代を緩やかに生きる人々の暮らしが描かれて行く作品です。
世界観としてはいわゆるポスト・アポカリプス、終末ものといわれるようなジャンル。
しかしアルファさんをはじめ登場人物たちは意外と明るく、その暮らしぶりには少しあこがれてしまうほどの穏やかさがあります。
連載自体は1994年~2006年と10年以上前の作品でありながら、今読んでも全く古い感じがないんですよねぇ。
われわれの生活と地続きな雰囲気でありながら、文明が衰退した世界観ゆえに、ハイテク機器が一切出てこないあたりがその一因かもしれません。

今作で中心的に描かれるのは、主にアルファさんとお店の常連の人たちとの交流。
その中でもタカヒロマッキの二人をめぐるエピソードの数々がもう大好きでして。
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タカヒロとマッキ
物語開始時点ではまだまだ子供で、おませな少年とおてんば少女そのものといった感じです。
タカヒロ少年にとって、アルファさんはちょっと気になるお姉さん。
一方でアルファさんからすれば、可愛い弟分のタカヒロ。
序盤は特にこの二人に関するエピソードが多く、その関係性が実に微笑ましい。
中でもその微笑ましさがトップクラスに際立つ話があります。
土砂降りの雨に降られて身体が冷えきってしまったアルファさんとタカヒロの二人。
びしょ濡れで喫茶店に戻った二人ですが、アルファさんは何を気にするでもなく、タカヒロにお風呂に入ることを提案します。
そう、一緒に。
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で、こうなった
ロボットとは言え見た目はきれいなお姉さんですから!
思春期の男の子には刺激が強い。
いや、そうでなくても刺激が強い
保護者であるガソリンスタンドのおじさんが車でタカヒロを迎えに来るも、別れ際はこんな感じ。
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そりゃまずいですよ!

さすがのアルファさんも反省。

一方で、タカヒロに好意を持つ少女マッキこと真月(まつき)ちゃん。
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タカヒロ大好きマッキちゃん
いつもアルファさんのことを楽しそうに話すタカヒロを見ていた彼女。
そのためアルファさんに対しては若干複雑な気持ちを抱いているご様子。
タカヒロがアルファさんに会わせようとしてもなかなか乗り気になりません。
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こちらも思春期全開ですね可愛いですね
ちなみにさっきのお風呂エピソード。
あれには続きがあって、おじさんと一緒にマッキも迎えに来ていました。
そしてタカヒロが見慣れない服を着ているのに加え、いい匂いがすることから何かを察したマッキ。
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このセリフにこの笑顔であるよ
いやー小さくても女ですね真月さん!!
その後、タカヒロと遊んでいる最中に偶然にもアルファさんと会うことになってしまったマッキ。
普段のおてんばぶりは鳴りを潜め、なにやら挙動不審に。
しかもタカヒロはマッキの心中などお構いなしに二人を残してトイレに行ってしまう始末。
しかしタカヒロのことについて意を決して話してみれば、あっという間に仲良しに。
だってアルファさんいい人だもん。
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「のこのこ」
最初の緊張はどこへやら、この「男子ってー」的なノリがむしろ暖かい。
ほんとこの周辺のエピソード好きなんですよね。

彼ら以外にも、先述したガソリンスタンドのおじさんをはじめ、魅力的な人物がたくさん出てきます。
本当になんてことない日々ばかりではあるんですが、少しずつ人々の関係性が変化していったり、ちょっとずつ成長していったりするさまがものすごく丁寧に描かれていて、彼らの人生がまるでそこにあったかのように感じるほど。
一方で変わらないものもあります。
それが、アルファさんをはじめとするロボットたち。
見た目は普通に人間なのですが、当然ながら肉体的な成長、言い換えれば老いることがありません。
いうなれば不死身に近い。
でもロボットたちは同時に感情も記憶も持っています。
同じように生活しているのに、どうしたって同じ時間を生きていくことができない。
だから、タカヒロがアルファさんに対して好意を寄せてみたところで、アルファさんはそれにこたえることができないんです。
このことはマッキとの会話の中で、アルファさん自身からも語られます。
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「いっしょの舟」にいるみんながうらやましい
これはこの作品全体に通ずるテーマだと思っていて。
アルファさんが主人公であることで、ただ終末ものの終わりゆく人々を描くだけでは味わえない、遺されていく者たちの寂しさが否応なしに浮き出てくるんです。
丁寧すぎるほどに人々の生活と成長を、変わりゆくものを描く一方で、その時の流れには追従できない、あくまでも変わることのない無機物であるロボットが主人公であること。
しかもその世界は、気付かない程度に少しずつ、終わりに向かっているということ。
これらが相まって、巻を読み進めるごとに切なさが増していくんです。
このあたりの雰囲気はこの世界の片隅にが少しずつ近づいてくるあの日を意識させつつも、徹底して生活を描き続けたことと近いところがあるかもしれません。

そういえば読み終えた後、自分は人間側ではなくアルファさんたちロボットの方に深く感情移入していたことに気付きました。
それは読者である我々もまた、タカヒロたちとは違う時間を生きているからなのかな、と思います。
積み上げられてきた生活描写の丁寧さが彼らを他人のようには思わせてくれない一方で、どんどんと成長していく子どもたちと、少しずつ終わりのときを感じさせる年長者たち。
なんだかさっきのアルファさんとの関係に近いものがあるように思えませんか。
それが最高潮に高まるのが、物語の終盤。
すっかり成長してアルファさんのいる町から離れ、自立した生活を送り始めるタカヒロとマッキの姿を見た時の、圧倒的な切なさ。
成長を嬉しく思う一方で、読んでいる我々もまた、彼らとは同じ時の流れに生きることができないのがあまりにも強烈に突きつけられてしまう描写で。
本当にただただ切ない。
あんなに思春期してた子供たちなのになー・・・うぅ・・・
読み始めた時は「これは好きなタイプの世界観だぞ」くらいだったのが、最終巻になるころには「ああ・・・終わらないで・・・」という気持ちでいっぱいに。
正月に実家で何一人でひたってんだよと思いながらも、読みながら涙をこらえられませんでした。

浪漫と謎と

さて、しんみりしてしまいましたが、ここまでに述べた以外の楽しみもたくさんあります。
個人的に大好きなのが、先述した妹分のロボットであるココネとの、友達とも姉妹とも表現しきれないちょっとドキドキする関係性。
ココネ単独のエピソードもとても魅力的な場面はたくさんあるのですが、やはりアルファさんとの仲睦まじいあれやこれやのお話が特に秀逸。
それというのも初登場回が衝撃的すぎましてね。
ココネは最初、アルファさんにある情報を届けに来た配達人として登場します。
言われるまでココネがロボットであることに気付かなかったアルファさん。
ロボット同士だからとココネは直接情報を送ることを提案します。
実はロボット同士では会話以外にも直接情報をやり取りするインターフェースがあるのですが・・・
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直接
これ考えた開発者天才かよ(歓喜)
読みながら「あらーーーーーー!!!」って叫んだよね。
実家で。
ココネとアルファさんは最初の出会いがこれだったこともあって、実にいいドキドキを何度も見せてくれます。
しかもココネはこの時のアルファさんの反応がなかなか印象に残りすぎてしまい、のちに他のロボットとのやり取りで恥じらいを見せるようになる場面も・・・
おやおやこんなところに綺麗な白いお花が(笑顔)
そして、そんな好奇心旺盛な(?)ココネをメインとした作中のロボットの謎をめぐるエピソードも、この作品のSF的魅力を引き立てます。
作中ではアルファさんをはじめとして、ココネ以外にも何人かのロボットが出てきますが、見た目には全員人間と区別がつかない、魅力的な「人物」です。
彼らがどうやって作られたのか、なぜそもそもロボットが創られたのか。
彼らの型番号と同じラベルを持つレコードの発見を機として、少しずつこの謎が明かされていきます。
中でもロボット開発にかかわっていた人物の一人、子海石(こうみいし)先生にまつわるエピソードが実に味わい深い。
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このおばあちゃんがまたいろいろとかっこいいんだ。
年寄りがかっこいい作品は最高だと思いませんか。
その他にも謎の巨大な植物や水神さまと呼ばれる人型キノコなど、SFというかすこしふしぎ的要素もあり。
このあたりについて考察するもの、このマンガの楽しみの一つです。

すっかり大切な作品になりました

あぁー、もう魅力が有り余っていてとても伝えきれないんですが、自分にとってまた一つ大切な作品になりました。
ここまでがっつり心に食い込む作品がまだまだあるんだなーと。
正直この記事を書くために読み返しては何度も目を潤ませる羽目になったよね。
もし未読の方はぜひこの機会に読んでみてください。
ふとした時に思い出したくなる素敵な世界がここにあります。
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