「この世界の片隅に」が盛り上がっている今こそ「あれよ星屑」を読む

なかなか「この世界の片隅に」の衝撃が抜けきれません。
原作読んだ後に再びシネマシティで観てきたんですけど、映画ではカットされていた原作のエピソードが、それでもなかったことにはなっていない程度にちりばめられていたのに気づいて余計にぐっと来てしまいました。
おかげで終盤は初回以上に泣いてしまってね。
あらためてものすごい作品だと思いました。
次はもう少し冷静に演出とか背景を楽しめるといいな(まだまだ観に行く気です)
さて、今回は最初の感想記事でも少しだけ触れたあれよ星屑について書きたいと思います。
今回は文字多めです。
あれよ星屑 1 (ビームコミックス)
山田 参助
KADOKAWA/エンターブレイン (2014-04-25)
売り上げランキング: 16,522

戦後を生きる男たちの濃ゆい話

まずは公式のあらすじをば。

敗戦から一年余り、東京は飢餓と混乱が蔓延していた。心に傷を負い、酒浸りの日々を送る元陸軍軍曹の川島は、戦友であった黒田と再会し……。ビーム初参戦の異才・山田参助が、唯一無二の筆致で贈る、東京焼け跡ブロマンス。

今作は「この世界~」よりもう少しあと、戦後の東京を舞台に、元軍人の川島とそのかつての部下、黒田の二人を中心として繰り広げられる人間ドラマです。
元軍人たちが主人公なのもあって、戦争が負けて終わってしまったことによって喪失感にさいなまれる人たちが多く描かれます。
軍人という立場を失った川島と黒田はもとより。恋人や家族を失ったもの。家を失ったもの。
戦争が終わる前後で大きく変わってしまった日本で、東京といういろんな立場の人がうごめく街でそれぞれが何を失い、これから何を希望に生きていこうとするのか。
それらが生々しい質感迫力の濃ゆい線で描かれています。
ちなみに作者の山田参助氏はゲイ雑誌でも活躍されているだけあって、男女問わず人の描き方に実に色気があります。
DSC_0009
男の表情のこの迫力
何か大きな主軸のストーリーがわかりやすくあるというわけではありません。
ただあの時代に生きた人間たちが抱えた闇と、それでも進んでいく生活に翻弄される人々が描かれているんです。
なんかこういう書き方すると誤解されそうですけど、全然重い作品ではないんですよ。
確かに線の太い絵柄も相まって重厚な迫力がありますが、どちらかというとあっけらかんとしているというか。
しょっちゅうセックスの話してるし。
ほら、生きるのに必死だからね!

これもまた、この世界の片隅のお話

全体的に近いテーマながらも「この世界~」とはいろいろと正反対のマンガだったりもします。
かたや戦いの中でも普通の生活を奪われまいと力強く生きる呉の女性を描き、
かたや戦いに負けて世界に翻弄される生き残ってしまった男たちを描く。
ただどちらも共通しているのは戦争そのものではなく、その時人々がどう生きたかにフォーカスを当てている点です。
戦争の話ではなく、生活の中に戦争があった人たちの話なんですね。
だから飯も食うし、洗濯物も干すし、セックスもするんです。
その一つ一つが何かを盛り上げる劇的なことなのではなく、そういう生活・人生模様そのものが劇的であると描いてくれている作品です。
あくまで戦時中、戦後というのは人間模様を浮きだたせるための舞台装置でしかないんですよね。
そうそう、そういえばあれよ星屑を読んでいてどうしても思い出す作品がもう一つあって。
他でもない、手塚治虫大先生奇子です。
奇子(1) (手塚治虫漫画全集)
手塚 治虫
講談社
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手塚マンガって本当に幅広くて、少年マンガから少女マンガ、超骨太ストーリーマンガまでなんでもござれなんですけど、そんな中でも骨太中の骨太がこれ。
ストーリマンガだと「アドルフに告ぐ」あたりが有名ですが、こちらも隠れた名作。
ですがあまりに骨太すぎて正直万人にお勧めできる作品ではないです。
こちらも時代はまさに戦後。
天外家という豪農が戦後のさまざまなひずみの中で「奇子」という娘を中心に少しずつ崩壊していくさまが描かれます。
リアルに戦後を経験した手塚先生だけあって当時の時代の空気はもちろんのこと、昼ドラも真っ青なレベルでどろっどろの暗黒人間模様「本当にこれがリボンの騎士を描いた人の作品か…?」ってなるほど。
でもこれもやっぱり「戦後」という舞台装置をつかった人間ドラマなんですよね。

やはりいつの時代であっても人間ドラマは面白い

戦争を取り扱ったマンガってのは何かと構えてしまう部分が多いじゃないですか。
実際自分もそうだったわけなんですが。
だからジブリは好きでも、いまだに火垂るの墓は観てません。
日本に生きているとどうしても「戦争よくない」っていうのがまず先頭に来ちゃうところがあるというか。
そういうあたりを「戦後民主主義の後知恵」とぶった切っているこの町山智浩氏の発言がとても腑に落ちたんですよね。

もう戦争からずいぶん経った今、主張や思想を交えずに、大河みたいなひとつの歴史ドラマとして語れる部分が増えてきているのかなーとも思います。
まあ奇子なんかは戦後30年もたたずに描かれてますけどね。そういう意味でもあれはすごい。さすが神様
ふむう。なんだか全体的に珍しくまじめな感じの記事になってしまった気がするぞ。
4巻に出てくるおそらく一番くだらない(それでいてブログに上げられるラインの)画像を上げてお茶を濁しておきます。
DSC_0007
左下のコマの二人の表情がたまらない。
そんなわけで「この世界の片隅に」に感動した方はぜひ「あれよ星屑」にも手を伸ばしてみてください。
こちらも間違いなく名作です。

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